整骨院の広告規制とは、柔道整復師が開設する施術所の広告において、掲載できる情報の種類・表現・媒体を法令および行政通知によって制限するルールの総体のことです。

主要データ

  • 広告規制の根拠法令:柔道整復師法第24条・あはき法第7条(厚生労働省 医政発0218第1号 令和7年2月18日)
  • 全国の柔道整復施術所数:約5万か所厚生労働省 衛生行政報告例(令和4年度)
  • 広告ガイドライン改定:令和7年2月18日付で最新版が通知(厚生労働省 医政局長通知)
  • 施術所の新規開設届出数:近年横ばい〜微減傾向(厚生労働省 衛生行政報告例、各年度)

「ホームページは広告じゃない」という誤解が、いま最も危険だ

この誤解は根深い。いまでも「ウェブサイトは広告規制の対象外」と受け止めている院は少なくないが、令和5年以降の行政解釈を前提に実務を組み立てるなら、その理解のまま運用を続けるのはかなり危うい。

令和7年2月18日付で厚生労働省が発出した医政発0218第1号通知(以下「広告ガイドライン」)では、不特定多数の者に向けて情報を提供するウェブサイト・SNS・チラシ・看板はすべて「広告」の対象になると明記されており、Googleビジネスプロフィールの説明文だけでなく、インスタグラムの投稿やLINE公式アカウントの案内文まで含めて、外部へ向けて発信する情報は広く規制の射程に入ると考えるほうが安全である。

しかも、全国に約5万か所の柔道整復施術所があるなかで集患競争が強まるほど、表現を少しでも強くしたいという心理が働きやすいのに対し、経営上より重いのは掲載時の反応ではなく、その後に行政の指導が入り、修正対応と全媒体の再点検に時間を取られる局面である。そこが盲点だ。

整骨院の広告規制の法的根拠はどこにある?

まず押さえたいのは条文だ。柔道整復師法第24条は広告規制の中心であり、「何人も、施術所に関しては、何らの方法によるを問わず、広告をしてはならない」と規定したうえで、例外的に広告が許可される事項(絶対的広告事項)を列挙している。原則は禁じること、許されるのは例外という構造である。

法定の絶対的広告事項は以下の通りだ。

  • 柔道整復師である旨
  • 施術者の氏名・住所
  • 施術所の名称・電話番号・所在地
  • 施術日・施術時間
  • その他厚生労働大臣が指定する事項(料金、予約制の旨、駐車場の有無など)

ここで見落とされやすいのは、法律の文面だけを読むと掲載可能な内容がかなり狭く見えるものの、広告ガイドラインでは「一定の条件を満たす場合に限り認める事項」が補足されており、しかもその条件は表現の置き方や文脈の違いで評価が分かれうるため、感覚的な判断ではなく厚生労働省の最新通知を基準に確認する姿勢が欠かせないという点だ。

「施術」「料金」「症状名」——どこまで書いて良いのか?

迷いやすいテーマである。現場で判断に詰まりやすいのは、施術内容、症状名、料金の記載だ。整理すると次のようになる。

項目

掲載可否

条件・注意点

施術料金(目安)

条件付きで可

明確な価格表示が必要。「要相談」のみの表記は不可とされる場合がある

症状名(「ぎっくり腰」「肩こり」等)

慎重な運用が必要

「ぎっくり腰に効く」等の効果断定は不可。受診勧奨表現も必要

「骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷の施術」

柔道整復師の業務範囲内であることが明確な表現

施術者の資格(柔道整復師)

国家資格の明記は認められる

体験談・ビフォーアフター写真

原則禁止

特定の施術効果を想起させるため不可

「No.1」「地域一番」

禁止

比較優良広告として景表法違反にもなり得る

「体全体を考慮したアプローチ」「根本から変える」

禁止

医行為・効果断定を想起させる表現

誤解されやすいのは、問題になりやすいのが症状名そのものではなく、「症状名」と「効果断定」が結び付いた表現だという点であり、「腰痛でお困りの方へ」という案内文だけで直ちに違反と評価されるわけではないが、「腰痛が軽減する」「腰痛を解消」といった文言が加わると規制に抵触しやすくなる。判断の分かれ目はそこにある。

SNS・MEO・チラシで陥りやすい具体的な違反パターン

抽象論だけでは足りない。ある都内の整骨院では、Googleビジネスプロフィールの「ビジネスの説明」欄に「慢性的な腰痛・肩こりを多角的に見直す」と記載したまま1年以上運用していた。保健所からの指導が入り、記載の修正だけで済んだが、改善命令が繰り返されると行政処分・施術所の閉鎖命令に至るケースもある。

SNSに関しては、特にInstagramの投稿で頻出する違反パターンがある。

  • 患者の体験談・感想の掲載:「3回来院したら腰が楽になりました」という実際のコメントも、効果を保証する広告として扱われる
  • 施術前後の写真比較:姿勢改善のビフォーアフター写真は原則禁止。外見上の変化を示すことが効果断定につながるためだ
  • 「予約殺到」「◯名様限定」:優良誤認を誘発する表現として景品表示法でも問題になる
  • 芸能人・著名人との施術写真:著名人が来院したことをほのめかす表現は、第三者の信頼性を借りた広告とみなされる

さらに見逃されやすいのが紙媒体であり、チラシやポスティングも広告規制の対象に含まれるため、「肩こり専門院」という表現は業務範囲を超えた専門標榜として問題視される可能性がある。柔道整復師の専門は骨折・脱臼・捻挫等の外傷性疾患であることから、「肩こり」を施術の主訴として前面に出す表現は、業務範囲について誤認を招くと解釈される場合がある。軽視はできない。

整骨院広告規制におけるSNS・MEO・チラシで陥りやすい具体的な違反パターンの様子

広告規制と「自費メニューの訴求」はどう両立させるか?

経営上、避けて通れない論点だ。自費施術の比率が増加傾向にある現状では、院のサービスを訴求したいというニーズは自然である。とはいえ、自費メニューだけが規制と切り離されるわけではない。

保険外施術(自費)についても、広告ガイドラインは「施術所の広告」という枠組みで一体的に適用されるため、自費メニューの訴求にも同様の制約がかかるが、広告ではなく「院内掲示」や「スタッフによる口頭での説明」として提供する情報は、広告規制の射程外に置かれる。ここは使い分けが要点になる。

実務では、広告規制を単なる制限として受け止めるだけでは不十分で、院内掲示・窓口説明・パンフレット配布を組み合わせれば、規制の範囲内でも患者への情報提供の幅はなお確保できるため、院の外へ向けて発信する「広告」と、来院後に患者へ渡す「説明資料」を媒体と意図の両面から明確に分けて運用することが基本となっている。

加えて、Googleビジネスプロフィールのウェブサイト欄からリンクされる院のホームページも「不特定多数への発信媒体」とみなされる点は重要であり、MEO対策とコンプライアンスは別々に考えられないため、指名検索で来院を促すナレッジパネルの整備においても、施術所名・所在地・電話番号・営業時間の正確な記載という「法定絶対的広告事項」の範囲内で最適化する運用が現実的である。

行政指導を受けたら、どう動くべきか?

対応は早いほどよい。保健所から「改善指導」の連絡が入った場合、初動の質がその後を左右する。まず問題の広告を即時削除・修正し、指導担当者に修正内容を文書で報告する。「法的に問題ないはずだ」と正面から争っても、行政との関係をこじらせやすい。

行政処分に至るプロセスは、指導→勧告→命令→施術所の閉鎖命令という段階を踏むため、初回の指導段階で速やかに是正できるかどうかが経営への影響を大きく左右し、弁護士や社会保険労務士への相談も命令段階に進んでからではなく、少なくとも勧告を受けた時点で並行して進めるほうが、実務上は動きやすい。

結局のところ、広告規制を正確に理解している院ほど、残された余白、つまり法定許容範囲内の情報発信を着実に活用しやすい。ベテランの院長が「広告規制は守るためのルールというより、競合との差別化の土台だ」と語るのは、その現実を言い当てているからにほかならない。

この記事は「整骨院経営の完全ガイド|売上・自費移行・リピート率改善」の関連記事です。経営・売上に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。