2026年(令和8年)の柔道整復療養費改定は、令和8年6月1日付の厚生労働省通知(保発0601第4号ほか)で確定し、令和8年7月1日の施術分からすでに適用されている。初検料・後療料の引き上げというプラス面と、2部位目からの逓減新設という構造変更が同居しており、院の請求構成によって影響の向きが変わる改定だ。

主要データ

2026年改定で何が変わったのか?

全体像から押さえたい。今回の改定は「基本料金の引き上げ」と「算定ルールの見直し」が同時に行われており、単純なプラス改定として受け止めると実態を見誤る。変更点を新旧で整理すると次のとおりだ。

項目

改定前

改定後(令和8年7月1日施術分〜)

初検料

1,550円

1,560円

再検料

410円・初回後療日のみ

420円・初回および2回目の後療日

施療料(打撲・捻挫)

760円

770円

後療料(打撲・捻挫)

505円

550円

温罨法・電療の加算

75円・33円

80円・46円

冷罨法の加算

85円

80円(引き下げ)

多部位の逓減

3部位目のみ60%

2部位目80%・3部位目60%

明細書の加算

明細書発行体制加算・月1回10円

明細書発行加算・発行1回につき10円

出典はいずれも厚生労働省 保発0601第4号(令和8年6月1日)の新旧対照表である。冷罨法のように引き下げられた項目もあり、「全項目が上がった」わけではない点に注意したい。

料金の引き上げで収益はどれだけ変わるのか?

増額の中心は後療料だ。打撲・捻挫の後療料が505円から550円へ45円上がっており、日々の算定回数が多い項目だけに、1部位中心の請求構成の院では着実なプラスに働く。

ただし、多部位請求の院では話が変わる。後療料のみで単純比較(温罨法・電療等の加算を除く)すると次のようになる。

  • 1部位: 505円 → 550円(+45円
  • 2部位: 1,010円 → 990円(550円+440円、−20円
  • 3部位: 1,313円 → 1,320円(550円+440円+330円、+7円

2部位目に80%逓減が新設されたことで、2部位請求はむしろ微減になる。改定のプラスを取り込めるかどうかは、自院の部位数構成次第という構図だ。まずは直近数か月のレセプトで1部位・2部位・3部位の請求比率を出し、自院への実際の影響額を試算しておきたい。

長期・頻回施術のルールはどう変わったか?

ここは実務への影響が地味に大きい。長期施術(初検月から5か月超)の75%逓減と、長期頻回(連続5か月にわたり月10回以上)の50%逓減という枠組み自体は従来どおりだが、起算月のルールが変わった

改定前は「初検日が月の16日以降の場合は翌月から起算」という取り扱いがあったが、改定後はこの特例が廃止され、初検日を含む月から起算に統一された。月の後半に初検した患者では、減額の開始が従来より1か月早まることになる。長期患者のリストを月次で管理している院は、起算月の計算方法を7月施術分から切り替える必要がある。

また、受領委任の取扱規程を改正する同日付の関連通知(保発0601第5号)では、患者ごとの償還払いへの変更に関する新しい定量基準が追加された。令和9年1月以降、前月までの連続する12か月の間に通算8か月以上かつ9部位以上の施術を受けている患者は、保険者からの償還払い注意喚起通知の対象となり、その後の事実確認を経てなお該当すると考えられる場合には、償還払いへの変更通知が送付される流れになる。該当しうる長期・多部位の患者を早めに把握し、施術録の記載(継続の必要性・経過)を充実させておくことが備えになる。

明細書発行加算はどう変わったか?

構造が変わった。改定前の「明細書発行体制加算」は月1回10円だったが、改定後は「明細書発行加算」として明細書を無償で発行するごとに1回10円を算定する形になった。

算定できるのは、明細書を有償交付する旨を地方厚生(支)局長に届け出た施術所以外で、無償交付する旨を施術所内に掲示し、実際に無償で交付した場合である(保発0601第4号 備考9)。レセコンの設定変更と、施術所内の掲示・窓口運用の見直しをセットで行いたい。

そのほか押さえておくべき変更点は?

同日付の関連通知では、柔道整復師による自己施術や、家族・関連施術所の開設者・従業員に対する施術(自家施術)が療養費の支給対象外であることが明確化された。従来グレーに扱われがちだった領域が明文化された形であり、該当する請求が残っていないか、院内で一度確認しておくべきだ。

あわせて、受領委任の取扱規程の申請書作成ルールに「正当な理由なく、請求を遅らせることは認められない」ことが明文化された(保発0601第5号)。繁忙期に請求業務が翌月以降へずれ込みがちな院は、月次の請求フローを見直すきっかけにしたい。

レセプト用紙のレイアウト変更も示されており、明細書には負傷名または施術部位の記載欄が追加されている。レセコン各社のアップデート対応状況を確認し、7月施術分の請求(8月提出分)からの切り替えに備えたい。

院長が今月から着手すべき実務対応は?

施行済みの改定なので、対応は「これから準備」ではなく「今月の請求から反映」である。優先順位をつけるなら次の3つだ。

  1. レセコン設定の確認: 新単価(初検料1,560円・後療料550円等)と2部位目80%逓減が7月施術分に正しく反映されているかを、請求前に必ず確認する。旧単価のまま請求すると返戻の原因になる。
  2. 部位数構成の把握と影響試算: 直近レセプトから1部位・2部位・3部位の比率を出し、改定後の単価で自院の増減影響を試算する。2部位請求の比率が高い院は、収益計画の前提を見直す必要がある。
  3. 長期・頻回患者の洗い出し: 起算月ルールの変更を反映した長期患者リストを作り直す。あわせて、令和9年1月から適用される償還払い変更の定量基準(連続12か月・通算8か月以上・9部位以上)に該当しうる患者を把握し、施術録の記載水準を点検する。

改定対応は一度きりの作業ではない。7月施術分の返戻状況を8〜9月に確認し、設定漏れや運用のズレを早期に潰すところまでが今回の改定対応と考えたい。